ストレートじゃない教科書

日本には数多の大学生向けの英語教材がある。わたしはそれらをジロジロ見る機会があったのだけれど、
そのほとんどが「これでもか!」ってくらい男女カップル至上主義を貫いていた。カップルという設定がどうしてそんなに必要なのか理解できないが、とにかく男女ペアを登場させ、(彼/彼女という設定で)会話させる内容が掃いて捨てるほどあった。ストレートだけが謳歌され、他のあり方など存在しないかのようである。テレビや映画や何もかもと同じように、英語の教科書でさえ男女カップル至上主義を押し付けられるのは辟易するよ、と辟易して見ていたら、ひとつ、あら?と思えるものがあった。


今日はそんな異性愛主義に貫かれた教科書界で、かなり異色にみえる教材を紹介したい。まあ、ストレートじゃないように読みたいあまり、一見強引な見解を示すと思うけど(それから人種についても)、教科書を使ってこんな読みをするのも珍しいと思うので、そのへんは勘弁して欲しい。(というか、ストレートじゃないものを見たいと思うと、こんな風に努力しなきゃならない。それくらい教科書界は男女カップルに取り付かれているのです。)

初めて使うスキャナーで、初めて取り込む画像がコレってのもどうかと思うけど、ご紹介します。


わたしが注目したのは、SEIBIDOという出版社から2004年に出された「Listen to this!」 という教科書。解説によると、「大学生を対象とした実践的なリスニングとスピーキングのための教材」だそうである。

ふむふむ、CDつきか。
でも、わたしは何も聞かず、内容も確認せず、掲載された写真だけ眺め、独断と偏見により裁断しようと思う。この教科書には、1レッスンにつき写真1,2枚とイラストが挿入されている。全部で15レッスンという少ない写真にもかかわらず、そのほとんどが興味深い写真なのだ。
どう興味深いかと言うと、、、、


まずはじめに押さえるべきポイントは、人物写真を見るときに大事なのは「視線」ということ。特に二人の人物が、視線を合わせているかあわせていないかは大事である。人物の視線について、有名な美術学者のテイラー氏はこう述べている。


「二人の人物が視線をあわせる場面は、二人の間に強い関係があることを示している。…視線のあいだには、愛情にせよ、敵意にせよ、相手に対する強い関心、冷静ならざる感情が介在するのだ。」(J. M. テイラー「映画を読む」p.23)、、なんて、ウソです。テイラーなんて人知りません、、わたしが勝手に考えたことです。


まあ、とにかく、この表紙で視線を合わせている人たちを見て欲しい。



スキャンダラスよ!
「女-女」「男-男」で見つめ合ってる! 
(、、念を押しますが、わたしの見たところ教科書界では同性ペアの設定自体少ないのです。)


この熱視線に気づくと、「いやーん、どういう関係なのー?」という疑問が沸いてくる。
そして、疑問を胸に抱きながらページをめくると、、

ファンシーなお買い物してる男子。         

ま、ちょっとファンシーだけど、これじゃ何の証拠にもならないわね、、
とページをめくると

  サンフランシスコ!


                      


                    しかも、サンフランシスコで、、ナンパしてる!!
                      (練習問題も、ナンパ用!、、うむ、実践的やも)


そうか、、そしてこんな風に仲良くなるのね!(あ、、違う相手か、、。そのへんもいい感じ。)


でも、これじゃ男子ばかりでつまらない。
女子はどうなのさ、女子たちは。
                   


もちろん、女子もです。

女子のナンパは、ネットでのpersonalらしい。うむ、、実践的やもしれん。
ここでの話題は「friendship inc」という「友だち探しのサイト」らしいけど、これは間違いなく「"friendship"」という " " 付きでしょう? 
(趣味のところも見て!環境問題とペットなんだから!)


出会い、、そして、、、

                                 


これが愛し合っている二人でなくてなんなんです!



そうと気づくと、ストレートを暗黙の前提にしてたせいで隠蔽されてきたことが明るみに出て、
たとえばこんな↓写真もそう見えてきます。




だいたいこんな感じなのです。
わたしのマニアックで強引なこじつけと思われるでしょうけれど、でも、この教科書では、他のペアは、、というか数少ない男女ペアはほとんど視線を合わせていません。


                       
                       ほらね。
                       設定の割には視線が合ってないから、冷めてるでしょ?

こっちも全然合ってない。


ちなみに、↑の写真は、この教科書で初めて「白人じゃなさそうな人」が登場する記念すべき写真でもあります。そして、このときすでにレッスン14であることから想像できるように、唯一の写真でもあります。
それ以外はこんな↓

ここでのタスクは、人物描写だって。「どんな風に見えますか?」って、、、わたしにはみんなハオレにみえるし、、わたしハオレはみな同じに見えちゃうよ、、。(男か女かってのを最初に聞いていて、面倒くさいな!と思うけど、でも、考えようによっては、こうやってわざわざ聞くことで男女カテゴリーを異化できる、、、というとこの本の肩を持ち過ぎるか。)



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というわけで、いくつか見たうち、この教科書がわたし目にはもっともストレートじゃない視線を可能にする教科書です。一方で、「出てくるのは、(優雅そうな)白人ばかり」という点に目をつぶらなければならず、これまたセクシュアリティを白人スタンダードにして考えてしまう事態を招きかねませんが、、。
そして、これだっても「カップル」としてみなければならないわけで、、、。そういうのはわたし、かなり面倒くさいので、いっそ鉱物とか天体とか無機的な題材にしてくれよって思う。

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、、、はぁ、、疲れた。
このために永遠に時間をかけてしまった。、、その割にはたいしたことないな。。ま、いっか。


それにしても、大学の英語の教科書ってあるんですね。それもたくさん。わたしが大学生だったときは、、確か小説とか批評を読まされたような、、。ま、いっか。