『皇帝ペンギン』
首が回らなくてツライので(比喩だけではなく、痛くて動かなくなったのです)ついでに?「皇帝ペンギン」見ました。
ご存知、清潔でロマンチックな物語として編集されたペンギンの生態映画です。
「愛で結ばれた夫と妻」「夫婦の絆」「自然の猛威のなか命がけで子供を守る母性(だか父性)」みたいな核家族物語として語られていくので、「これが自然の摂理だ!」とか、「人間もそうであるべき!」と思う人にはとっても耳触りのいい話にできてると思う。
わたしはその手の物語ってのは、保守的で頑なで、家父長制支持としか思えないから全然賛成できない。動物にしろ何にしろ、それがどういう行動をしてるかを理解/解釈するためには「理解できる物語」にせざるをえないだろうし、どの解釈も無実ではないとは思うけど、とにかく安易なロマンス化と一般化はしないで欲しい。
だから、普段なら男女主義のこの手の物語は不愉快で見ていられない。確か「あなたのなかのサル」という本は、「オス(そして男)こそが中心的な存在」というこの著者の「思い込み」を議論の絶対的な大前提にしていて、というか、サル(と人間)の行動すべての「根拠」として説明していて、だから何を見ても「オスの地位の証明」としてしか見ていなくて(、しかもボノボに関してさえそう主張していて)、途中で頭に来てバンッと投げ捨てたくなった。けれど、本を投げたりしてはお行儀が悪いのでグッとこらえ、あとで国会図書館の前で焼き捨てました。
そんなわたしですが、この映画に関しては、そういった夫婦至上主義の会話は、超特急で通り抜けて行くだけ。さっぱりわからないフランス語だからBGMみたいだし、きれいな映像だし、ペンギンすごいんだもん。
ま、わたしとしては、子供を亡くしてしまった親は「気が変になって別の親から子を奪おうとする」のではなくて、足元から体温のあるもんがいなくなって寒くなったからじゃないか?とか
「親は声で子供がわかる」とか言ってるけど、テキトーにその辺の子を見繕ってるんじゃないの?とか、、心温まらないことを考えたり、
夫婦愛物語というよりは、3ヶ月間ただただじっとして寒さを耐えたり、餌場まで何日もかかる遠いところを住まいにしたりしてて、「能率」や「進歩」「発展」「貯蓄」というような資本主義的な呪縛のない清貧物語にしてもいいんじゃん?って思ったりもしましたが。(こんなこと言うと下流社会人って後ろ指差されるのかしら、、、というか、この言い方廃れてくれたかし、、)
そんな疑惑も吹き飛ぶ勢いで、とにもかくにも「ペンギンってすごいなあ」という印象が残りました。何ヶ月も飲まず食わずでジッとしてたり、何日も何日もかけて海へ向ったり。思わず「尊敬する人はペンギン」って言っちゃいそう。
「マダガスカル」っていうアニメ映画のペンギンはサイコ呼ばわりされていて、「なるほどねー」なんて思ってたけど(、、なんで「なるほど」なのかわからないけど)、、、いやー、ペンギン。首もよく伸びてすごい勢いで下向いたりするし、、上向いてたかわかんないけど、、とにかく羨ましい、、首が回らない生活抜け出したい。(結局こういうことでしか自分とのつながりを見出せないわたし、、)
それにしても、ペンギンって集団でいるわりには助け合ってなくない?「夫婦の信頼」って言っても、卵や子供の受け渡しくらいだったし。「助け合う」ってどういうこと指すのかわかんないけど。