女子大のトランスジェンダー

1週間ほど前に話題になっていたのですが、NYTimesマガジンの記事(のわたしの解釈)
When Girls Will Be Boys  By ALISSA QUART  Published: March 16, 2008

アメリカの話です。

「女」から「男」に性転換する/している人が若い世代(10代)にも増えているそうです。
そのなかには、「女子大」に通う学生、「男」に転換している人もいます。しかも、クィアジェンダー不順応*1世代にあって、このうちの多くの人がそもそも「男/女」という区別ではないあり方を求めているといいます。(手術する人もしない人も、ホルモン投与等もいろいろ)


1.さて、では「女子大」です。

女子大は
法的に女」であることを入学資格にしているそうです。


また、女子大は「ジェンダー」に意識を深めてきたところでもあります。
「花嫁学校」のような一面とフェミニズム培養所」の一面とを持っているといいます。
例えば、スミス大の卒業生には、一方でバーバラ・ブッシュやナンシー・レーガン(→共に共和党(保守派の)大統領夫人)、もう一方でベティ・フリーダン、グロリア・スタイナム、キャサリーン・マッキノン(→有名どころのフェミニスト)がいます。


現在、女子大によっては(他のいくつかの共学の大学と同じく)
・トイレは「中性」(男女別がなく個室)のものがたくさんある。
・あらかじめ学生に「呼ばれたい名前」と「代名詞she/he」を聞いてくれる先生もいる
・トランス・グループがある


2.こうした背景にあって、
そもそもトランス学生の多くは、自分でトランスだと自覚する前は、「女」であるという前提にあるわけで、そういったアイデンティティを探索できる安全地帯として女子大を選んでいるといいます(まだ十代だし。)それから、やがて「ジェンダー不順応」だとカムアウトするわけです。

あるトランス男性の話
「(トランス男性にとって)暴力の恐れがない女子大ほど安全な場所はないでしょう。」
「男性よりも女性とのほうが共通する経験が多いですし。」
フェミニストもトランス・アクティビストもジェンダーに関心があるのだから(女子大はちょうどいい場所でしょう)」


3.しかし、異議も出ています。
たとえば、「男と同室は困る」という学生寮での苦情申し立て。
あるいは、卒業生の反対の声「女性の教育は主張される必要があります。(略)男の人がいける大学はたくさんあるのに、どうして女子大に来る必要があるんですか」
「トランス男性は、女子大のリベラルで受容的な雰囲気を利用して便乗しようとしてるんです」(→どっかの音楽祭で言われてたような…)


若いうちに性転換をする人やトランスというアイデンティティを持つ人が増えてくれば、こういう問題ももっと浮き上がるでしょう。いまでも、転校する人もいるし、孤立を迫られる場合も多いそうです。


4.こうして、女子大が抱えるジレンマが見えてきます。
自分たちが今までジェンダー問題に取り組んできたことも、少なからぬ影響をもってきたわけで、そうした問題のなかにいるマイノリティの立場を守っていきたい。
その一方で、
「女である」という経験を主軸にした学校としてその価値を保っていきたい。


ところで、
こういう記事ではよく語られているのですが、ここでも「ジェンダー(男女二分ではなく)連続体」で「パフォームされるもの」で、各人がそれぞれ「独自のジェンダー」を持っているという説が述べられています。
わたしは、そうだといいけれど、そう簡単にはいかないのがジェンダーだと思うのです。ジェンダーは、社会の仕組み(言葉、歴史、政治、経済)のなかで、まるでそれが当然のあり方かのように構成されてきたもので、ジェンダー概念なしにはものの区別もつかないような参照元になってると思うからです。だから多くの場合自分の意に関わらずいつも置かれている状況なわけで、自分で「選べんで」「演じる」範囲は少ないと思うのです。だからといって、全く選べないわけじゃないし、確定的じゃなくていつも揺らいでいるし、そこに賭けたい、わたしもそう思っています。そう思うのです、がしかし。ジェンダーをこんな風な文化的概念/あるいはパフォーマンスとみなしていては、「あ、そ、じゃ勝手にすれば?」って感じになってしまって(勝手にするのももちろんいいんですけど)、社会的・経済的・制度的な問題が見えなくなってしまう恐れがあると思うのです。ちょうどこの記事が問題にしているように、制度との軋轢や交渉があるのですから。


ということで(?)、この記事は(お茶を濁しながらですが)触れているだけエライのですが、卒業後の就職についてです。多くの州ではジェンダーアイデンティティによる差別禁止という方針はとっていません。そもそも学歴の有無に関わらずトランスジェンダーの人たちにとって就職は大きな問題だと言います。インタビューされているトランス学生は「ビジネスに関わるつもりはない」と話します。「将来を考えないようにすることを身につけたから、、いま自分がいられるスペースでベストを尽くすのみ」
ホント、そういう「スペース」が限られずに、選べるようになるといいのだけれど。

*1:gender nonconformingの日本語に該当する言い方がわからないので