白塗りな夜

初めて歌舞伎を見たときのことです。えーっと17才くらい。
なんせ「文化」からは100億光年離れて育ったんで、わたしと友だちは、ゴージャスでワンダーフルな歌舞伎ワールドにいたくカンゲキしたんです。


で、さっそく--


わたしたちもやってみよう!(、、ってフツウ思うか??)と、舞台用白塗り化粧品を手に入れ(←こういうアタマはある)、友だちの部屋に籠もると舞台の記憶とチラシを頼りに化粧をほどこしたんです。
ペンキを塗ったかのように顔を真っ白にして、口紅と絵具を使って目やら口元やら、、お互いの顔を見ては「あーでもないこーでもない」と手を加え、鏡を見てはウットリし、丁寧に顔を作っていきました。


といっても舞台ではなく日常なので、顔以外はいつもと同じです。*1
二人ともロングヘア(友だちはパーマ、わたしはストレートで)で、顔だけが真っ白。ブルーマンも真っ青のホワイト・ガールです。今にして思えばお姫様というよりお化け屋敷です。が、そのときのわたしたちは、舞い上がっています。自分たちのお化け顔が舞台の女形と重なり、歌舞伎ワールドにトリップした気になってるのです。


いつしかわたしたちはこう思うのでした。
  (…いまも愚かですが、かつてわたしたちはバカタレでした。若気の至りまくりだったのです)

「こんなにきれいなのに自分たちだけで見るのはもったいない」「外へ出てみよう」


ああ!わたしたちは若かったんですね、出かけましたよ!
夜中の1時ごろ。マンションの住人に見つからないようコッソリ友人宅を出て、町へ繰り出しましたとも。
残念なことに(幸運にも?)人気があまりなく、酔った背広のおじさんが数人と犬を散歩してるおばさんくらいでしたが、


ビックリさせてすいませんでした。
わたしたちはオバケでもチンドン屋でも、大野一雄でも、犬神サーカス団でもなく、女形を目指してたんです、、
 (いまだったら、ガングロのニュー・バージョンと思われ、、、ないよな、やっぱり。)

*1:だけど、顔だけが舞台化された非日常ってのはカッコいいかもしれなくない?