This Film Is Not Yet Rated (06)

spongey2007-09-10



「映画の年齢制限は誰がどんな感じで決めてるわけ?」というギモンに対する、(やや初心者向けの)ドキュメンタリー。面白いし、内容のわりには軽いタッチで、しかも情報も盛り込んでいて、とても楽しめました。


アメリカの映画年齢制限がどんなかというと(映画ではこれについても楽しく簡潔に説明しています。)

「G・PG・PG13」は制限なし。誰でもみてオッケー。
「R」と「NC17」は、制限アリです。
  「R」  18歳未満は保護者同伴じゃないとダメ。
 「NC17」 18歳未満は見るの禁止!!!


制限ナシとアリとでは、もちろん、興行的に大きな違いがでます。
制限なしなら、大々的に宣伝できるし、劇場も多い。
制限があれば、観客の幅も数も少なくなり、配給会社もいい顔はせず、ときには配給拒否/上映拒否されます。


つまり、年齢制限はある意味「検閲」として作用する、というわけです。


で、制限対象になっているのは、主にエッチなシーンと暴力シーンなんですが
これがなかなか面白いのです。
明確な判断基準がないので、、あるときはエッチシーンで「腰を動かす数」を数えて制限対象にしたり、、一方では「なんとなく」という理由で制限をかけたりしてるのです。


で、この映画によると、「暴力」より「エッチ」の方が槍玉にあげられやすく、
それも、
「男」より「女」のエッチ、
「ストレート」より「ゲイ・レズビアン」など非ヘテロのエッチシーンが叩かれているようです。


たとえばレイプされ惨殺されたトランス男性ブランドン・ティーナの実話を元にした『Boys Dont Cry』は、3つの点が問題になったそうです。それは「ブランドンが数人の男に殴りまわされ、頭を撃たれて射殺されるシーン」ではなく


1.ブランドンとラナのエッチシーンで、ブランドンがラナにオーラルセックスをした(と仄めかされる)後で、口元を拭う場面    理由「何がとはいえないけど、気分を害す」
2.レイプシーン 
3.ラナのオーガズムが長すぎる(!) 理由「不快だ」


こうした審査のされ方を見て「…そういうことね、って思ったわ」と、監督のキンバリー・ピアースはいいます。「男中心の業界だから男の視点で判断してる、、女の官能には慣れてなくて怖いんでしょう」


さらに、この映画はとっても面白い比較をしています。
2本の映画から「まったく同じ行為のエッチシーン」を見つけ、
ヘテロセクシュアルの場合」と「レズビアン/ゲイの場合」とを比べてるの。


ホント同じ行為なんですよ、マスターベーションとか体位とか。
なのに、ストレートは「R」判定、ゲイは「NC17」ってるのが、多いこと。おめーら、なんだべ?


こういった審査は、MPAAというアメリカ版映倫みたいな団体がしているそうです。誰が所属してるのかは匿名なのですが、しかし、この団体によると、審査は「平均的なアメリカ人」が行ってるとのこと。それでは、その「平均的なアメリカ人」って誰なの?という話に映画は進んでいきます。


ここからサスペンス風味も効かせています。
ほんとうの探偵を雇って、どんな人が審査をしているのか、張り込んで探しだそう!っていうのです。(探偵はレズビアンカップルとその娘さん。)車のナンバーをメモって、追跡して、レストランで話に聞き耳をたてて、出入りする個人を写真とって、ゴミまで漁る。


これってミステリータッチで面白いですが、
ただ、ここまでくると、審査する人たちをこんなにも悪人/犯人扱いで、いいの???っていう気がします。
そして、それがこの映画のちょっと残念なところ。年齢制限システムについて、かなり一方的な感じがしてしまうのです。わたしは基本的にこの映画に賛成なのでそれでいいんですけど、でも、それこそ幅広い観客に見せるためには、もう少し「平均的」でないと、、、って気がしちゃう。


映画では他にも
ジェイミー・バビット監督が、『But I'm a Cheerleader』(チアリーダーがホモ更正施設に送られるコメディタッチの青春映画)は、主にティーン向けに作っていたつもりなのに、「NC17にされるところだった」というエピソードを紹介し、「ゲイのティーン映画を作ったから差別されたと感じた」と。


それからもちろん(?)ジョン・ウォーターズ。わたしがいつか見てみたいと思っている『a Dirty Shame』についていろいろと話しています。


(ところで、話は変わりますが、わたし相当たくさんのレズビアン映画を見てるので、いつかまとめま〜す。)