読書ニッキ

いやー、おもしろかった。全然何も知らなくても、すぐに読めるところなんかもライトのよいところですね。内容もさることながら、読みながら「自分はどういう世界観(ラノベ)を体験してるのか」とか「“一般”小説(大人小説?)との違いは何か」ということも考えてしまい、おもしろい経験でした。昨日は3冊を読みましたの。読んだ順に感想を言います。


キノの旅(一)』時雨沢 恵一
さっき調べたら、これって大ヒット作で(シリーズ累計560万部以上だって)、映画にもテレビアニメにもゲームにもなってるんですね。だからかなりの人がご存知なんだと思うけど、わたしは全く知りませんでした。
これは、キノという名の主人公が、エルメスという名のバイク風の乗物(喋る)に乗って架空の国々を旅をしていくお話。一話ずつが訪れる国のエピソードで読みきりになっています。メーテルと鉄郎の出ない、ナントカ星を目指していない銀河鉄道999みたい。メーテルたちがプロフェッショナルの星とか怠け者の星とか寄るじゃない。そんな感じで旅をしてるんです。
だけど、思うに、この「ナントカ星を目指していない」というところがポイントなんですよ。この物語は「キノ」が何者なのか、何故旅をしているのか、ということを明かさないまま進んで行くんです。性別も年齢も大人か子供かもわからないし(少なくても一巻の途中までは)、旅をする理由もわからない。「キノ」が特定の誰かである必要もなさそう(襲名制だし!?)
何者かわからないキノ(未確認物体)がある国(システム)に入っていき、なんらかの作用を及ぼす。こうとらえると魅力的です。内部に入り込んだ部外者というか、トリックスターというか。それぞれの国のシステムを異化させる(←こんな動詞ある?)役目でもあって、それにはこの正体不明・目的不明というのはいい設定だなぁと思いました。なので、残念なのは「、、って名前の男」とか「、、って呼ばれた少女」という部分。なんで「男」や「少女」という風に固定しちゃうんだろう?しないほうが魅力的だよ。話としては後半の方が面白いんだけど、何者かほのめかす程度で進んでいた前半が懐かしく思えました。


半分の月がのぼる空橋本紡
これもテレビアニメやテレビドラマにまでなってるんですね。全然知りませんでした。
これはわたしにはちょっときつかった。勧めてくれた人が「ふつーのボーイミーツガールものですけど、ボクは結構好きで」と言ってたんですが、コバルト文庫からすでに似たようなものが100冊くらい出てそうな気がしました。何が特徴かなぁ、わたしにはよくわかりません。か弱くて守ってあげたくなるような女子を優しい男子が守ってくれるような話、としかとれなかった。タイトルも大層だけど、別に物語の中で活きていたとも思えないし、わたしのセンスでは良さがわからないです。中学のころ読んでも同じように思ったと思う。ケっ!と。しかし、いまのわたしが違うのは、「こんな風なボーイミーズガールのお話が好き、ウフ」と思ってる男子を「カワイイ」と思うところでしょう。なんというおばさん力!(それとも、おばさんになった(成熟したという意味ね)こととは関係ないのかしら。)


『ブルー・スカイ』桜庭一樹
勧められたのは別の本だったのだけど、貸し出し中で、桜庭一樹はこれしかなかったんです。
これは、ラノベ?ではないよね?イラストがないから違うかな。っていうかティーン向け?大人向け?(そもそもその区別は?)上の二つでふわっとした気持ちになっていたんで、まさかこんな本に行き当たろうとは、、。すごく面白かった。アンチ・キリストのアイデアも翻訳のアイデアも楽しめました。この人はきっとアイデアや書きたいことがドクドクとあるんだろうなぁと思える一冊でした。次も桜庭一樹を読もうと思う。
(ところで、ほんっとに枝葉なことなんで、ここだけ取り出すのもどうかと思いますが、わたしは世界で一つの花とか言う歌が安っぽいマルチカルチャリズムみたいで出てきた当初から大嫌いだったんですが(花をとりまく経済的格差を隠蔽し、かつ、どんな花でもいい←花であるなら←花を咲かせなきゃ認識されないと)、この本の登場人物は「草でもいい」と言っていました。あ、でもこの本のいいところはこれじゃないんです全然ちがう。)


というわけで、この2冊(1冊はラノベじゃないかも)から考えるに、主人公が十代くらい、親がいない(か、殆ど出て来ない)くらいが共通かなぁ。それに加えて上の2冊はかなり読みやすかったです、飛ばし読みを前提にしてるかのよう。どうして読みやすいのかまだわかんない。もしかして、大事な情報は登場人物によって説明されてるせいかも(引き出すんでなく説明しちゃってる。)あと、設定こそが勝負という気もする。


あと何冊か勧めてもらってるので、いつか読もうと思います。
だけどちょっとしばらくは中島敦
「あなた、初め、私の名前を聞いたわね。だけど、どうしてあんな事をするの。別に恋するのに名前も何もいらないじゃないの。あたし、あれでがっかりしちゃったわ。」
ホント、どうしてあんな事をするのよ。