グレムリンがいたと思う

旅行へ行くと何もかもが新鮮に映るので、そのへんの猫を見ても思わず「あ、見て、猫だよ!!」なんて喜ぶ修学旅行生みたいになってしまいますよね。珍しく見えるんですもの。

そんなわけで、わたしには中国で見た何もかもが珍しくて驚きだったんです。


たとえば、成都で薄暗くなってから迷い込んだ路地。
下町団地横丁って感じで、料理屋、八百屋、美容院、なんでも屋などなど小さなインディペンデントなお店がずらっと並んでいました。お祭り?ってくらい住人が外にいて、露店で何か食べたりゲームをしたりして、とっても賑やか。

行き交う人々から聞こえる言葉もわからず、裸電球で照らされるボロい店の間を通っているうちに「これは、、、グレムリン売っててもおかしくない!!」と思いました。


映画ってのは、イメージを使ってスタンダード価値観を促進する装置の一つなわけで、
わたしなんかはハリウッドのハオレ映画(ハオレはハワイ語で「白人」、知ったかぶって急にハワイ語にしてみました)を見て育ったようなもんなので、いつのまにかハリウッド的ハオレの視点に同一化してる、と思います。それで、『グレムリン』で思ったことなのですが、、


その前に、いま思えば、映画に描かれる中国っていうのは、怪しくて神秘的で混沌としているようです。(ま、昔の映画だと「中国も日本も同じようなもんだろ」ってわけで区別なくめちゃくちゃに使ってるのもあるのですが、、、アジアといえば中国と日本ばかりだし、、。)ハリウッド映画のオリエンタリズムについては、わたしが思いつくことなんて誰かがとっくに指摘しているでしょうけど、

たとえば『チャイナタウン』なんて、ストーリーには関係ないのに、「混沌」の比喩として「チャイナタウン」ってタイトルにしたんだと思いますよ。


ほんで『グレムリン
成都の横丁で「グレムリン売ってそう」と思ってから気づいたのですが、これなんかもオリエンタリズム映画なんですね。そもそも『グレムリン』という映画でも、「中華街では変な生き物がいてもおかしくない」っていうイメージを前提にしているのですよね。

基本的なプロットは(子供のころ見たきりなので間違えて覚えてるかもしれませんが、)

1.白人カップルが中華街の古道具屋でグレムリンを見つけて飼いはじめる
2.グレムリンを飼うには特別なルールがあるが、そのルールを犯してしまう。
3.そのために、グレムリンは増殖し、悪事を働き、白人の町が大混乱する。
4.カップルがなんとか鎮圧して、グレムリンは古道具屋の中国人のおじいさんに引き取られる


こうやって書き出してみるとこの映画、「グレムリン=「外国人労働者/移民」政策のしおり」みたいな映画に思えます。無用心に異質なものを入れ込むと大変なことになりますよ!と。
つまり、「グレムリン」というのは「異質なもの」の喩えといえます。「異質なもの」ってのは常に「当たり前に」あるべきものだと思いますが、ここで問題なのは、「異質なもの」が「問題」や「負担」と結びつけることによって他のモノから切り取られて見せられるところです。(別バージョンで「異質さ」がアイスクリームのトッピングみたいに、ただの飾りとされる場合もある。)


グレムリンの「特別なルール」というのは、、自分(アメリカ人)たちとは異なる秩序(「無秩序」ってされることもある)、異文化の「異質さ」みたいなもんでしょうか。夜何時以降に食べてはいけない、水をかけてはいけないとか、(飼い主にとっては)非合理的な理解できないルールでやっかいなわけです。そしてこれは飼い主の暮らしとは迎合できない問題となるように描かれます。

さらに、(ルールを破った飼い主が罰せられるのではなく)グレムリンが暴徒化するってのも、何かを物語っていますね。。理解できない異質なものは、理解できない力と怒りを秘めているだろうっていう怖れを具体的にして見せている、ついでに、おとなしい方は「良いグレムリン」、増殖して手におえない方は「不良グレムリン」と区別をつけて、でも結局「グレムリングレムリン」と括って、お引取り願って終わっています。異質なものは排除すべきだというわけです。


飼い慣らすか、暴徒化するかっていうのは、、どうなの?
映画ではグレムリンはペットという従属的な位置におかれてるので、グレムリンの生活をコントロールするのは飼い主ってことになっていますが、
当然のことながら、人(移民)はペットではないのですから、そもそも勝手に「主人」の立場に立って「コントロールする」つもりになってるその根性からしてなおした方がいいんじゃないかと思います。
と、急に現実を念頭において怒りを感じてしまうほどなのです。



、、で、なんだっけ?そうそう、成都の路地横丁はグレムリンを売ってそうって話でした。わたしが知っているのとは違う時間が流れていて、違う習慣があって、、、。世界不思議発見

でも実は、迷い込んだわたしこそがグレムリンでもあったのです。(可愛くないうえに、どんな力も秘めていないってすぐにバレる種類ですが。)