待っている

先日、いろんな土地に住んでる友だち数人と待ち合わせしたのですが(もちろん「待ち合わせ」がメインではなく、集まって遊ぶのがメインですけど)つくづく待ち合わせの仕方が変わったな〜と思いました。広範囲から集まるのに、だいたいの場所とだいたいの時間だけ決めて「あとはケータイで」ってだけでちゃんと会えるんですものね。
携帯電話がないころは、待ち合わせはもっと厳重で、会えないかもしれない不安と隣り合わせでした、、、大げさだな、、でも今と比べたら不安だったよね、


あれは、新宿三越の美術館が「ダリ展」を開催したときだから、何年前だろ?わたしが携帯電話どころかPCの存在すら知らなかった頃。
招待券をもらったので、わたしと友だちとで見に行くことにした。(なんでわざわざ「招待券をもらったから」なんて書くかというと、貰わないと行かなかったかもしれないからだ。、、ダリの宝石展は面白かったけど。でも、なんか「今さら、、」感があったんですよね。)


というわけで、とにかく、ある日曜日、わたしたちは新宿で待ち合わせをした。
ジワジワと暑く、立っているだけで汗が流れるような日だった。
わたしは時間通りに着いたけど、友だちがなかなか現れない。
何してるのかしらん、、?
「まあ、そのうち済まなそうな顔して来るでしょうよ」なんて、まだ余裕のわたしは、その顔まで思い浮かべて嬉しくなってついニヤニヤしていた。(つくづくあたし、この友だちが好きだったんだなぁ。)


けど、、
20分経っても来ない。「まさか、、寝坊?電話してみるか!」
と、近くの公衆電話へ。、、、、誰も出ない。
友だちは相部屋の寮に住んでいて、電話はルームメイトと共有、留守電もなかった。「出ないってことは…少なくても寝てるわけじゃないな」ということがわかった。「なら、いま向ってるところだな」と、またもや友達の焦った表情が思い浮かんだ。

けれど、、、なかなか現れない!さらに10分経過…また公衆電話へ、、。

誰も出ない。


いい加減、頭に来た。
こんな暑いなか、こんなに待たせてさ。どういうつもりさ!
「、、もう待つのやめようかな、、待たないで一人で行こう」そう思ったけれど、一方で「でも3、40分程度の遅刻ってのは、フツーはどうなんだろ?わたしが短気なのかしら?(ホントに、遅刻ってどれくらいが許される相場?)」と考え直したり、
「こんなこと考えているうちに、今にも来るかもしれないし、、」なんて希望も捨てきれず、
「アッタマ来た!いま来たとしても、即座にバイバイするからね!フン、許さないから!」
と思えども、まだ去れない。、、周りの人はどんどん待ち合わせの相手が現れてどんどん変わっていく。


わたしはみじめな気持ちになってきた。、、、忘れてるんだ。わたしはこんなに楽しみにして、こんなに待ってるのに、きっとあの人忘れてるんだわ。
「…昨日確認しとくんだった(、、、わたしは確認しなくても覚えてたけど)」
わたし、こんなに待って、こんなに怒ってるっていうのに、向こうは覚えてすらいないとしたら、、、
みじめで泣きたくなってきた。
それでも、「とか言って、いま現れるかもしれない」なんて、希望も捨ててなかったりして、それにも悲しくなったりした。


もうやめ!


「1時間待ったしやることはやった、そして、あたしはあのひとにとってどーでもいい存在なんだわ」と怒りと悲しみでモヤモヤしながら、その場を去った。…せめてダリを見ていこう!


こんな状態で見たダリは、、、大変な混雑で、人の肩越し頭越しに垣間見るって感じだった。「ダリ」の感想は「混んでる」であった。その光景がなんだかシュールであった。
わたしはみじめであった。
…アタシは会うって考えただけで楽しくなっちゃってたのに、あのシトにはこんな程度にしか思われてないんだ。後で電話して怒っても虚しいだけだよね、あたし価値がないんだもん。、、とすっかりイジケていた。


イジケつつも洋服を見たりして過ごし、帰り際に、ふと、待ち合わせ場所に戻ってみる気になった。
すると、、、いると思います?、、わたしは「いるかも」なんて微塵も思ってなかったんです、なんといっても約束の時間から2時間半経ってるんですから。


そしたら、雑踏の向こうに見える、、友だちが、ボサーーッと立ってるではありませんか。…どういうこと?


「あんた、、、バカじゃないの?!」、、こんなに遅れて、、しかも待ってるなんて!


わたしは嬉んでいいのか、呆れていいのかわからなかったけど、やっぱり嬉しかった。話を聞くと、実習かナンカの実験が長引いて帰れず、待ち合わせ時間に1時間半遅れた、それから今まで待ってたと言う。


あのねぇ、約束の時間より1時間半遅れて、それで相手がいなかったら、帰っちゃったってことじゃない?ぜったいに、会えっこないよ。戻ってくるわけないじゃん。それなのに待つってどういうことよ?

「わかんないけど、ちょっと待ってみようと思って」

わたしなら絶対に待たないよ。しかも1時間も。バカだよバカ。笑っちゃうね。


友だちが「人垣越しのダリ」を見るのを待って、それからアイスクリームを買った。歩きながら食べるアイスクリームは、日も傾いてるのにすぐに溶け出して、手がベタベタになった。
笑っちゃうよ、バカな一日。
思い出しても笑みが浮かんじゃう。携帯電話があれば、こんな偶然の「友情の試金石」的な事件起きなかったよね。(ちなみに、この友だちとは、数年後に赤いパンツをめぐって大喧嘩するのであった。)


それにしても、携帯電話がある現在、遅刻許容の相場ってどれくらい?それに、当時の1時間ってのはどうなんだろう?

ポケットの小石と戯れたり、ときどき小石を口に入れたり。