「偉い人練習帳」

このあいだ中上健次のビデオを見ていたら、健次の手書きの原稿がうつりました。罫線いっぱいに、隣の列とくっつきそうに、びっしり並んでる。丸こくて、チャーミングな文字なんです。


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わたしは字が下手で、小学校では給食の時間に字の練習をさせられてたし、高校でも大学でも「履歴書は代筆してもらえ」と言われてきました。
高校の日本史で「大隈重信は字が下手だった」と教わってから、なんとなく親近感を抱き(でも、総理大臣になるくらいだからきっと悪人ですな)、「字が下手なえらい人をもっと知りたいなぁ」と思ったくらい。
すっかり「字が下手」というアイデンティティを確立しているのです。


当然、ペン習字帳や書き方練習帳にも手を出したこともあります。でも、長続きしないのですよ。(そもそも、長続きするような性質なら、字もきれいでしょうけど。)最初のうちは面白いし、字もうまくなった気がするのですが、新鮮味がなくなるとだんだんやらなくなり、やがて字も元に戻っちゃう。


こういうのが長続きしないのは、ひょっとして、書き方用の文字は「お手本的」以外に特徴がなくて、誰の文字でもなく、どの歴史も感じられない、味気ない文字だからじゃないかしらん?


で、ビデオ見て考えたんですけど、もしも「中上健次練習帳」とかあって、中上健次の文字をお手本に練習できたりしてら、ガゼン頑張ると思うなぁ。あの細くて丸っこくて強い字をまねしてたら、わたしも少しはいい字が書けるようになるだろうになあ。練習文も「時候の挨拶」とかじゃなくて、中上健次の文なの。いいなあ!!


ってわけで、わたしの提案は「文豪練習帳」「偉い人書き方練習帳」です。
 好きな作家とか憧れの人のナニカって、自分に取り入れたいじゃない。ちょっと近づけるような気がして。

 ついでに、わたし、英語の筆記体が読めないし書けないけれど、たとえばヴァージニア・ウルフの字がお手本だったら、これも頑張れる気がする、すごくインテリっぽいもん。


というわけで、どうでしょう。「偉い人書き方練習帳」
字の練習もできるし、まねしてる文の意味がわからなくても少しは賢くなれる、と思うのですが。(わたしが思いつくようなことは、100年前から1000人くらいが考えてると思うけど、、ひょっとしてすでに存在するのかしらん。)


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中上健次見て思ったことはこれかよ!」と思われるでしょうが、、堪忍してください。