縦に帰る

中学は「徒歩で片道50分」という通学をしていました。毎日毎日同じ友だちと楽しく歩いてました。とはいえ、時間が合えば帰りも一緒だったので、一日2時間一緒に歩いてるわけで、ある日、言語化できないマンネリ感が漂った、という程ではないのですが、なんとなく「なんかさー、いつも同じじゃん?」という話になり、「うん、、いつも同じ配置で横に並んでるし」ということになりました。
「そういや、なんで横になってんだろ?横の必要なくない?」
「、、ないない。そんじゃ、縦に並んでみよっか。」 
ということで、二人で縦の列になって歩き出しました。
「おお、これは!」 これって傍から見るとヘンかもしれませんが、やってみる側にも(意外と?)ヘンな感じなんですよ。景色も違って見えるし。「かなり新鮮だ!」と、楽しくなっちゃって、ついでに「右、右、右」と声をかけながら、足を揃えて行進してみました。街中ですが「右、右、…」と。でもまあ、どんなことにも慣れるっていうか、だんだん行進自体が話題ではなくなって、そのうち縦の列のまま「今日体育でさー、○○がさー」とか好きな人の話題とかして、、「ええー、やだホント!」とかいうリアクションをするときは、前の人はクルっと後ろを振り返って、後ろの人は前の人の肩をもって前に回って「ええ、それで?!」なんて、話の内容はいつもと変わらないのに、なんだかドラマチックに…
 でもこのバカな歩き方にもいい点もあって、別のある日「たまには縦に帰ろうか」ってことで(アホだ!)、また縦列になって歩いてたところ、前方に、最近他のグループからハブにされてる同級生がいました。「どうする?誘ってあげようか?」ということになったんですが、このとき、縦列っていうのがいい感じだったんです。このとき同級生○チャンを誘うっていう行為は普段とは違う行動なので、普段どおりの横配置では、下手すると、「わざわざ誘ってあげた感」が漂うような、同情してるってのが前面に出てしまうような、こっちも意識しちゃって恥ずかしいような、そんな場面だったのです。が、なんといってもこの日のわたしたちは縦列。縦列のまま○ちゃんの横に行きます。○ちゃんがなんなん??とひるんだところに、「ねえ、あたしっち縦に帰ってるんだけど、○ちゃんも縦になんない?」と言うと、○ちゃんの顔がパッと明るくなり「なにそれー?!」と。 些細なことに大笑いする年頃だったのか、3人で縦になるとそれらしさが倍増し、その分バカらしさも倍増。キャッキャキャッキャいって帰り、「また縦に帰ろうね、、横でもいいし」とバイバイしました。そんな「縦」の会。
 しかし、いま思えば、これは帰宅時だから起こり得たんだよね。学校に向うときに行進しようと思わないもん。学校が終わりその解放感があったからこそ行進しちゃう、みたいな(しないかフツウ。)