面白かった本

かつてはよく本を読んでた方だと思うし、メニューの能書きとかお客様各位みたいな貼紙とか字があるとつい読んでしまうので、もしやわたしいわゆる活字中毒?なんて自惚れていましたが、最近では本やメニューを読まなくなったどころか、あらそこに字があったの?ってカンジなんです。ま、それでもいいよべつにと思ってましたが、このたび次の文字が恋しくなるほどグイグイ惹きこまれ文字を追っってしまうという事態に至りました、

この小説で

カズオ・イシグロ 『わたしを離さないで』


もしもこの本をこれからお読みになるのでしたら、予備知識なく読み始めることをお勧めします。

けど、ちょっと言っちゃうと
ある謎の施設で育った3人の若者を描いていくのですが、大事件が起こるのではなく(大問題の渦中ではあるのだけど、)小さなエピソードを回想しながら徐々に3人の運命が描写されていくのですが、その出来事にリアリティがあって感情の動きも上手に描かれていてサモアリナンなんです。わたしたちはみんな多かれ少なかれ自分がどういう社会のなかのどういう位置にいるのか、とか、どういう存在かってことがわからないわけで、そういうわからないなかで、自分のわかってる範囲でやりくりしていると思うんだけど(この小説で謎になってるのはもっと具体的な立場なのだけど) その様子がすごくいいんですよ。説明するのではなく繊細に同時に力強く描かれて。
久しぶりに本のことを。