もし上からぶつかったら

やっと読み終わりましたの。古川日出男『聖家族』
超大作の厚い、重い本で、寝ながら読むには全く適さず、そのせいか、読み終わるまでに他の4冊の本を読みかけつつ今に至りますの。
とっても複雑で長い小説で上手にまとまった感想がいえないので、いきなり部分だけ取り上げてみますが、


わたし、ほれ、馬がさー、気になるじゃないですか。レッドクリフとか猿の惑星とか影武者とか乱とか。馬はいつも馬で道具、、動物だから動具?、、なの?って。思うじゃないですか。
その馬の、日本での馬史が、農作業の馬から、外来種と交配され軍馬になって、やがて戦い方が変わって馬が消えて、馬のお化けになって「ソウヨ。ソシテ私タチハ弔ワレモセズニ」と、こんな風に馬の物語が語られているのが、良かったです。古川日出男の動物はいつも好き。犬も。


それから郡山のビッグアイとか、東北のいろいろな場所をシンボリックに扱って、意味ありげなカンジ・レキシを漂わせて広がっていて、まるで東北が冒険ファンタジーの架空の舞台のように立ち現れて、いいなー東北はこういう舞台になって、と思いました。だってさー、わたしの祖母のうちは伊豆にあるんだけど、伊豆なんて伊豆の踊り子一つで何十年もたせるの?ってカンジだもの。いい加減違う架空の舞台にして欲しいよね。お宮の松があるっけか、、でもなんつーか、もっとファンタスティックな、、ケチな学生さんとかじゃないやつがいいなー。


あと、拘置所の兄からの手紙に、「前略」って書くところを間違えて「全略、、」になってるのが、とってもウケた。全部略しちゃう手紙って、アハハ。


そして例によって、
刀狩りとか徳川慶喜とか、東北からの歴史として語られて、んだ、続けろ、と思って読んでると、いきなり登場人物の一人が昭和61年生まれだったりして、若くていいないいな、とまた自分の年齢を気にするのでした……そういう病気なので。(ちなみに、、物語的にはそれでもいいんですけどー、でもやっぱ子どもを産めないおばさんが子どもを誘拐して死ぬのはちょっと、、殺さなくてもいいんでない?と、産んで祖母になる妹や孫の話が盛り上がってる一方で、産んでないおばさんのわたしはちょっと寂しく。、、『gift』だっけ、短編集のなかに太った女の人が空き家に篭る話があったんだけど、その話でも最後に(ネタバレ→)その子が仕切りなおして出て行くとき、ついでに痩せている。というのが、できれば太ったままで出て行って欲しかったんだけど、、、それと同じ。いいんだけど、でも…なところでした。)


そういうわけで?、わたし古川日出男が好きなんですけど、

どういうカンジの好きかというと、

わたしね、前にも書いたんですが、ときどき道歩いてるとき、もしも上から人が降ちてきて、下を歩いてるわたしにぶつかったら…と怖くなるんです。マジで。で、そうなったらわたしは即死しますように、とか考えてるの。
でね、もし人が落ちてきて死んだら、もちろん、許したい。っていうか実際「許す」とかそういう問題でもないんで、、、でもちょっと無念なので、、、だから「許す」というのはボキャブラリーないゆえの表現だったりして。ということも含めて、
上から人が落ちてきて、ぶつかって死んだら、その人のことも含めて
古川日出男さんにその許す文章を書いてもらいたい、

という好き方です。