世捨て人?

推理小説が読みたくなって、よくわかんないから「本格ミステリ:2008年本格短編ベスト・セレクション」を手にとってみたんですけどー、

法月綸太郎の「ギリシア羊の秘密」 ホームレスの人が殺される話ですが、事件や推理に直接どうこうではなく、出てくるセリフ。ありふれてるこれらのセリフに、ヒステリックに反応したくなりました。

「今時まっとうな、清く正しいホームレスですよ」
「ホームレスだって電車くらい使う…」
「ホームレスに落ちぶれた引け目から…」

これはセリフなので「ある登場人の見解」なわけで、それに文句を言うのもあれなんですけど、でも、これらのセリフが登場人物のうち誰の発言かヒジョーに特定しにくいんですよ。同じ人が言ってるのか、別の人のセリフも混じってるのか、アホなわたしには分かりませんでした。話のなかでこの見解自体が問題視されることもないから、むしろ下地にとれた。

特にわたしがカチンときたのは、「そんなことで命を落としたら、いくら世捨て人だからって浮かばれやしない。…」ってやつね。

何の脈絡もなく「ホームレス=世捨て人」とみなすのはどうなん。いつ、どんな「世」を捨てたというのよ?「あなたたちの世」に存在させまいとしてるだけじゃないの?ってね。

これらは「事件に直接どうこうということなく」とは言いましたが、実は、この推理小説の事件は、そもそも「ホームレスは「同じ世」の人じゃない」という見方が招いた事件、ではあるのです。…と、わたしはそこまで深読みしましたけど、小説のなかでは別にそこまで追求してはいませんでした。ヒステリックに反応したせいで、われながらここまで読めたと思うのですよ。ギリシアの何がどうしたのかさっぱりわかりませんでしたが。