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愛についてのキンゼイ・レポート [DVD]愛についてのキンゼイ・レポート」を見た。この映画は、20世紀の半ば、アメリカで初めてセックスに関する大調査をしたアルフレッド・キンゼイの伝記風物語。キンゼイについてよく知らないし、伝記モノがあまり好きでないわたしですが、この映画は親しみやすくわかりやすくて面白かったです。


ただ、「親しみやすくてわかりやすい」のが問題かもしれない。描かれている人も事件も単純化されすぎている、ような。特にわたしが思ったのは、歴史的な背景におかれた「無知」や「常識」という「性の抑圧」はわかるんだけど、その他の点での差を認めていないところ。その他の点とは、経済的な、文化的な、宗教的な、いろいろな違い。娼婦は排除されてるし、インタビューされているなかにたまに白人以外の人がいるけれど、それらの人も「白人と同じ」という扱いがされている。もちろん、白人と違うと言い張りたいのではないのではないのだけれど、人種間のことや文化的・経済的な違いが何も話題にならないってことは、こうした白人以外のインタビューがただのトークンに思えてしまう。社会学のように項目を設定するような調査の場合、その項目で掬い取れないコトってのが必ずあるわけだけど、その掬い取れなさは項目設定の基準のせいもあるのだから。実際の調査のときがどうだったのか知らないけれど、いま映画化しているんだから、調査のときのこういう姿勢(があったとしたら)示唆するようなこともできたんじゃないかし?でも、できたかもしれないけど、していない。というわけで、わたしがパラノイアかもしれないけど、イノセントな白人フェスティバルだと思った。

それから、この邦題の「愛についての」というのは要らないとわたしは思う。「キンゼイ・レポート」でいいじゃんか。セックスは愛についてかとか、キンゼイが愛についてかってことをタイトルに押し付けられたくない。


とはいえ、全体的にわたしは楽しみました。もちろん、チャプター16の短いラブリーなインタビューも。


それから、キンゼイ・レポートですごいなと思うのは、禁止されている行為や知らされていないことを自分で編み出したり、なんだりかんだり、結構みんな逞しいんだなあってこと。


(ちなみに、ナニかが禁止されてるからこそ、それが「別の」行為で現れるっていうようなことは少なくても映画では掘り下げられていなかったです。)