『V for ヴェンデッタ』

ナタリー・ポートマンが、「V」という謎の人物と出会い、その人物--復讐と全体主義政府の転覆を企んでいる人物--と関わることで、自分も革命に参加していく、という革命?映画。いえーい、Wachowskiきょうだい!


原作はコミックだそうで、そのせいか全体的にかなりマンガっぽいと思いました。(わたしマンガに詳しくないので、はたして「マンガっぽい」が妥当な表現かわかりませんけど。)
おもに物語の単純化と誇張の仕方が「マンガっぽい」と思ったところですが、でもこれは悪い意味ではありません。マンガっぽいのは時にとってもいいと思う。


仮にも「革命」を起こすなら決断と行動が必要なわけで、「決断と行動」というのはその部分だけみれば、とても単純化されていて割り切っていて大げさな性質のものだと思うんです。「それは悪いからやめろ」とか「こうしよう!」という言動の瞬間は、日常生活のレベルでも、結構ドラマチックだし「マンガっぽい」のではないか。何かをするというのは、そ「別のナニカはしない」という切捨ての瞬間でもあるのだし、複雑な事情を単純化することでもあると思うから。
だから、この点で、マンガっぽくてよかった。


ただ欲をいえば、そういった決断や行動に至るまでの過程、社会への批判や気づきに至る過程を大雑把に戯画化して欲しくなかったな。


映画では、言論統制や絶対命令、同性愛弾圧や異教禁止などの「問題」が(ハオレ目線で)すごく単純に誇張されていて、誰が見ても一目で「ひどい」と思う程度のレベルまで単純化されているけど、わたしはこのあたりの「弾圧」をもっと繊細に、暴力的な場面だけでなく、日常生活の些細なやり取りのうちに描いて欲しかった。だって、そういうのが繰り返されていくうちに、実際の暴力をふくむ暴力的な「ひどい社会」が浸透し実現されるだから。マンガ/映画の世界だけではなくて、いまこの生活のなかにも、そういう曖昧でわかりにくい形をとりながら、恐ろしい価値観が浸透しているかもしれない。っていうか、浸透しているのだから。

たとえば「同性愛差別は問題だ」と伝えるのに、「同性愛は打ち首」というのを見せれば、「そりゃひどい」って思う人が多いと思う。でも、実際はそういう明確でドラマチックな形ばかりとらず、多くの人に「差別」とは思えないような日常化された言動や実践を通して「差別」はまかりとおっているのだよね。


だから、「革命映画」にはそういうところも描いて欲しかったのです。革命的なところはマンガっぽく、社会問題の描写はビミョーでわかりにくく複雑に、という具合にコントラストをつけて欲しかった。
人々が、(経済や民族文化を軸に)複雑で捉えにくい諸々の問題のなかにビミョーに絡めとられ、複雑に考えながら、「決断」や「行動」という割り切った振る舞いをするところが、「決断」の決断たる、革命の革命たるところだと思うのです。(それが描かれていないので、革命が「個人的な復讐のついで」的な扱いになってる気がする。ま、この二つは切り離すことはできないとは思いますが。)


そしてわたしは思いました。「社会問題」という文脈では、「理論vs実践」とか「学者とアクティビスト」というのが、別物と看做されたり、相反するものとして批判されたりします(←テキトーなこと言ってるんですが…よく知りませんけど)、わたしは全然別物と思いません。ビミョーなことを繊細に真摯に考える理論が大いに必要ですし、理論も実践だと思います。それより、理論にも実践にも何かしら「判断」する段階があって、「判断」という戯画的瞬間がある(そして、単純化のうちに切捨てされてることがある)ってことに気づくことだと思います。そのなかで、ときには問題の、例の、「主体性」をガンガンに発揮すべきだと思います。…これってわたしの行動へのあこがれなんですが。リロンだけでなく、毎日の生活もこういうことかな、、


と、そんなことを考えました。映画は坊主頭が似合ってたしエンターテイニングでしたよ。
(あ、でも、途中でポートマン(と観客)をだますのは、あれはどうなんだろ、、。観客が拍子抜けするような嘘は映画では逆効果だって、ヒッチコックが『舞台恐怖症』で実験済みじゃなかった?)


あと、今さらながら初めて『氷の微笑』(1の方)を見ました。
シャロン・ストーンが出なかったら耐えられない、マイケルダグラス我慢ドラマ。
始まった瞬間から「マイケルダグラス殺されろーー!!!」と願い続けていたのに、、、、、、
最後まで出続けるとは何事じゃい!  


DVDが終わってうっかりテレビ画面に戻したら、ニュースでアベ内閣のことやってて一気に憂鬱に、、は〜、これが現実だったっけ。ずっと寝ていたい…そして良い世界になったら起こして欲しい。
でもあまりに何も期待できないし、それどころかますます弱者切捨てで悪くなる予感ばかりがするので、ひょっとしたら意外と予想が外れて良い方向に向うかもしれない、という期待がふと湧き上がって、、、きませんね、、。
近所のレンタル屋が割引キャンペーン中なので、まんまと釣られて、しばらくは映画で現実逃避します。