楽しい映画

「楽しい」といっても、レズビアン映画では、死なないだけで楽しく感じちゃうんだけどね。 


まずは、レズビアン(というか女)の表象についてかなり意図的に作った映画と思われるもの。
ハリウッド的な雇われ監督作品じゃなく、おそらく低予算(アントニアを除いて)な作品。 

アントニアの食卓 Antonia's Line (1995) アカデミー最優秀外国語作品賞
Big Dreams in Little Hope
ゴーゴー、チアーズ!But I'm a Cheerleader (ティーンで触れるべきですが、大人の方が楽しめる気がして)
Carmelita Tropicana (1993)
恋のミニスカウエポン D.E.B.S. (2004)
2ガールズ Incredibly True Adventure of Two Girls in Love, The (1995)
It's in the Water
Mango Kiss
Puccini for Beginners (2007)
素顔の私を見つめて Saving Face

(感想文がある映画にはリンクを張ってあります。その他はここに一言コメント。今日は触れませんが「いい人なんだけど、、」の映画もだいたいこの中に入る。結構ありますね。今までの不幸を払拭するかのように頑張ってるのですね。)

感想を書いてなかった二本について、軽く書きます。

『素顔のわたしを見つめて(Saving Face)』(たぶん本当はメジャー公開の項目に入れるべき映画だけど)
めったにないアジア系(中国系)映画なうえに、めったにないアジア系のレズビアンの映画です。NY近郊の中国系アメリカ人(1、2、3世)コミュニティを背景に、母と娘の関係を描いています。タイトルは「面目を保つ」という意味ですが、特に映画では家名を汚さないとか評判を傷つけないとか、そういう意味合いです。(アジア系の話はいつも家族ですからね。『ジョイ・ラック・クラブ』とか、、『ラスト・エンペラー』とか…他に中国系あったっけ?←ということもこの映画では触れてある。、、あ、家族話ではないアジア系のレズビアン人物を思い出しました、『トスカーナの休日』のサンドラ・オーの役。とても好ましい役でしたね、、、殆ど出てこないけど!)話を戻すと、この一族の面目は危機に瀕しているのです。なぜなら、母親(夫は亡くなっている)は50才近いのに妊娠してしまい、しかも相手の名前を決して言わない。しかも、娘はレズビアン。というわけなので、さてどうする?…という物語です。
ラブリーな映画だと思いますが、、いくら幸せな話に飢えてるからとはいえ、かなり安易で大げさにハッピーなのと、、アジア系は優等生しかいないの??と思いますね。見ていてちょっとツライ。
ついでにこの映画でわたしの心を最も動かしたのは、ウィルとヴィヴィアンの可愛いカップルではなく、チョさん(お母さんに15年越しで片思いしているおっさん)なんです。気の毒な扱い受けてるけど、あんないい人いないでしょうに。マジで。ああいう人ってさ、いるときは「いや、この人は別に、、」って無視しちゃうものだけれど、年をとるとそういう人がいいものですよ。お金持ってるし。、、ホントにわたしがチョさんと結婚したいよ。チョさん大募集。


そういえば、『Floored by Love』というカナダのテレビドラマも入れねばならなかった。アジア系のカップルが中心です。特に日系の役の子がミシェル・ヨーに似ててカワイイんですけど。

審査員特別賞(審査員=わたしです)
Carmelita Tropicana (1993)
気もそぞろなときに見てしまったので、ハッキリ覚えてなくて悔やまれますが、この映画は今まで取り上げてきた他の映画と違って、家庭用ビデオ?という感じの独立短編映画です。
カルメリータ・トロピカーナ(=Alina Troyano)という「キューバレズビアンフェミニストのコメディアン/パフォーマー」が作った、「キューバレズビアンフェミニストのコメディアン/パフォーマーの生活」をパロった映画、と言っていいんでしょうか。監獄映画のパロディでもあります。歌もあり踊りもあります。
パロディという言葉が適切かはわかりませんが、面白いだけでなく、視線や語りに二重性があって、いろいろと考える可能性に富んでいます(…確か記憶では)。
Alina Troyanoについてヴィレッジ・ヴィオスの記事 Two Latinas, Two Lesbians, Two Laff Riots


ところで、ちまたでは『ちっちゃなパイパイ大作戦!』というのが話題作らしいですが、
 (楽しそう→http://d.hatena.ne.jp/gnarly/20070713
わたしはいま文化の枯れ果てた荒野にいるので、残念ながら見る機会はなさそうです。
しくしく


…さて、悲しい身の上話をしたところで次いってみよう。


ハリウッド的なメインストリームの楽しい映画

『マルコビッチの穴』
『キッシング・ジェシカスタイン』 
『Imagine Me & You』(英)

あれ?、、これだけ??


とはいえ、『マルコビッチの穴』も『ジェシカ・スタイン』も、両方とも、「レズビアンバイセクシュアル/ストレート」を問わずに、いや、問いながらでも、というか、そういうことを問うこと自体を問いながら、大好きな映画です。


ジェシカ・スタイン』は
ヘレンとジェシカという「レズビアンじゃない(はず)」の二人が「恋人同士」になるのを、おしゃれなデートとユーモアのある会話で追っていきます。(バーでの会話やヘレンが同僚に愚痴るシーンやナンパを利用したシーンとか。)
愛さずにはいられない映画です。


最後に「ジェシカが結局は男のところに戻った(?)」ということで、女同士の関係を卑しめたとか、レズビアンを貶めて男へ走った、とか*1そういう風にとれなくもなくないことはわかります(わたしも二人が別れてガッカリでした)。この点については、最後が「3ヵ月後」という短さのせいもあると思う。でも、お互いに求めているものの違いを認識して、別の関係にしたわけで、、、ポイントはそこじゃないと思うのですよ。(どっちかというとジェシカが振られたんだし。)


それよりも、感情や存在の仕方をカテゴリーにあてはめること自体を問題にしていて、「レズビアン」も「バイ」も「ストレート」も実はうすーーい隔たりしかない(かもしれない)という可能性が描かれていて、、そういうカテゴリーの存在自体を問題にする「ポストなんとか」な映画だと思います。そういうことが幾重にも描けていて、しかもお説教くさくない。大変いいです。賢くて大好き。


今日はここまで、飲みに行って来ます。

あ、そうそう、わたしギモンがあるんですが、ジェシカが同僚の友だちに打ち明ける場面で、同僚はよく話を聞き、いい質問をしてたのに、最後に「やめたほうがいいわね」と言ってません?あれはなぜ?何をやめろって?

*1:異性愛主義社会のなかでは、ことあるごとに「Aジョリー、レズビアンは卒業」みたいなケチな記事で傷つけられてきたわけだしね。「卒業」だなんて、レズビアンは「異性愛の前段階・未熟行為」という時代遅れのバカな言いがかり、、、でもそういう言い方がまだ力を持っている社会なんですものね。